花屋の開業では仕入れルートの開拓がうまくいくかいかないかで、開業自体が成功するかどうかが左右されます。ただ、仕入れルートの開拓はコツが入りますので、仕入れルートの種類と開拓方法について詳しくご紹介します。
1、市場直接仕入れ
文字通り、市場から直接買う方法です。
仲卸を通さない分、1本単位(切り花)、1個単位(苗・鉢)の単価は最も安いです。
その代わり、ケース単位で買わなければならず、小規模で、販売力がないお店では、全てのものを、市場直接仕入れするのは、難しいかも知れません。
品種によっては、ミックスの箱(一箱で何色か入っている)か、入り数の少ない箱、中心に狙う手はあります。
市場と直接取引するには、市場との契約が必要です。
その際、市場に対して保証金を支払います。
大体、保証金は20万円のところが多いです。
契約が出来れば、市場から個人番号を付与されます。
個人は、市場で商品を買う権利を与えられます。
買う権利のことを、買参権、買う側の人を、買参人(ばいさんにん)といいます。
買参人が支払が出来ない時などは、保証金から充当されたりします。
保証金は市場との取引をやめる時に、個人に全額返されるものです。
支払サイトは、1週間後が標準です。
現金取引に近いので、通常の運用資金に余裕を持たなければいけません。
1-1相対取引
昔はセリ取引のみでしたが、インターネットの普及や市場法の改正により、現在では、インターネットによる相対取引が多いです。
切り花では、7割以上。
鉢では、4~5割程度です。
セリ日は通常、切り花が月・水・金のところが多いです。
園芸は、まちまちです。火・水・木だったり、火・金だったり、火・土だったり。
そのセリ日の1〜2日前に、インターネットで1ケース単位で予約できるのです。
価格は、市場が決めます。
セリに多く残ると、価格が暴落しますから、その季節季節の供給量と需要量を勘案して、決めるのです。
人気商品は、セリに出る前に売り切れやすいので、買う側も、しっかり準備しなければなりません。
また、セリでは、ピッタリした数を上手に買える保証はありませんし、セリで買うのは、慣れるまで難しいかもしれません。
相対取引は、インターネットの環境があれば、個人個人、ID番号とパスワードを入力し、
パソコンでも、スマホでも買うことが出来ます。
セリが始まる前に、市場のほうで個人番号(買参人番号)別に、揃えておいてくれますので、その商品を持って帰ります。
1-2セリ取引
市場でセリ日当日、セリ人から商品を買う取引を、セリ取引といいます。
よくテレビで、築地魚市場や、下関のフグのセリなどを、見ますね。
冬の風物詩、千両市などが、NHKなどで、中継されることもあります。
昔、各市場が小さかったころは、どの市場も、手のサインで取引する、手競り(てぜり)でした。
市場が合併して、大きくなった東京などの中央市場は、機械による機械競り(きかいぜり)をしています。
市場が広すぎて、手のサインが見づらかったり、集計処理が一瞬で出来ますので、機械競りを導入している市場が多いです。
機械ぜりだと、買参人が席にすわり、会場のモニター画面を見ながら、テーブルのところのボタンを、
数量と価格を決めて押すことにより取引が成立します。
100回のうち95回は、セリのほうが安いでしょうが、欲しい商品が、予め相対取引で売れてしまう場合があります。
ですから、絶対に欲しい商品は、予め相対取引で買っておいて、あとは多いものは、セリ取引で勝負するといいでしょう。
春などは、花の需要が多く、花の供給も多い。
花が供給が需要よりも多いと、相場(価格)が下がり、天候の関係などで、供給が減ると、相場が上がります。
卒業式の前あたりは、バラなど洋花は、需要が多くて、相場が上がります。
母の日、お盆、お彼岸などの時は花の需要が多くて、花の価格が高いです。
5月の中ごろなど、花の供給が比較的多く、需要が一巡すると、花の価格が下がります。
秋は、花の需要が高くありませんが、供給が少ないので、花の相場は高めです。
花屋は、相場の上下に一喜一憂します。
年間を通じて、相対とセリを上手く絡めて、平均安く買うことが、必要です。
1-3 花の仕入と曜日
全国各地に花の市場は約200あります。
切り花と園芸、両方扱っている市場、
切り花だけの市場、園芸だけの市場、
様々です。
両方扱っている市場が約70%です。
切り花の市場の開市は、全国ほぼ、曜日は、月・水・金です。
金曜日は週末需要があり、やや多めです。
月曜日も、一番準備期間が長い(3日間で咲いた切り花)ので、
同じように量がある。
水曜日は、量が少ないです。
月金中心仕入れの小売りが多いです。
仲卸は、月水金の仕入。
週末のブライダルなどは、花が開いてないといけないので、
あえて、水曜日に仕入ます。
園芸の開市は、まちまちです。
市場に応じて、全く違います。
東京の大きい中央市場ですと、
切り花の開市とずらして、火・木・土。
地方の市場ですと、火・土だったり、火・金だったり。
月・水・金の切り花のあとに園芸だったりします。
売れる量、頻度に応じて、市場の参加機会を決めて行きます。
1-4花の仕入と時間
花のセリの時間は、切り花は朝7時からが一般的だと思います。
でも、そうではない市場もあります。
荷物(商品)は、売れるところに多く集まります。
荷物を市場に着けるにも、運搬費というコストがかかりますから、
生産者は、あまり多くのところに送りたくはなく、
ある程度、市場を絞り込みます。
荷物は多く売れる東京の市場などに集中する傾向にあります。
東京に一旦多く入り、そこからまた地方に転送されます。
例えば仙台の市場には、セリ日当日に荷物が東京から、
送られてきます。
仙台の市場の、切り花の競り開始時刻は、
東京からの荷物の到着を待って、9時からです。
園芸の競りも開始は7時が多いですが、
園芸は、切り花のダンボールのように重ね置きが出来ません。
がさばるものもあり、切り花より1時間ほど遅らせてセリ始める市場もあります。
あと、大切なのはネット相対取引の開始時間。
これは、市場、生産者、商品によりまちまちです。
今、ネット相対取引の比率が高まっています。
7~8割、セリの前にネット相対取引で売れてしまいます。
商品は、生産者からの送り状を見て、市場がその時の需給状況を勘案して、
価格を設定します。
時間が決まってる市場や、三々五々商品を上場したりします。
自分の取引市場の、ネット相対取引のクセを早く掴んで、
有利な取引を心掛けて下さい。
2、仲卸仕入
店が小さい、販売力が弱いという時は、市場直接取引ですと、箱単位の取引ですから、
花の本数が多く、売り切れないという問題が出てきます。
仲卸(なかおろし)は、いってみれば問屋業です。
市場から仕入れたものを、10本単位に分けて、手数料を載せて売ります。
その分、市場直接取引でよりは高いですが、大量に仕入れないですみます。
バラとかチューリップなどは、一箱に50~100本入っています。
仲卸からは、10本単位で買えます。
珍しい花の注文が入った場合、10本単位で買えばいいですね。
珍しい特殊な花は、箱で買っても、注文の人以外、中々買わないかも知れません。
仲卸を、上手に使うといいですね。
仲卸は、買参登録をします。
保証金を取るところと、取らないところがあります。
市場の中に、ある場合が多く、場内卸と呼ばれます。
市場と関係の無いところにある場合もあります。
場外卸といいます。
3、上手な仕入の仕方
ここまで、市場直接仕入れと仲卸仕入をご説明しましたが、最も上手な上手な仕入の仕方とは何なのでしょうか?
それは、臨機応変に、市場の相対取引、セリ取引、仲卸の取引を、ミックスさせることです。
お彼岸やお盆などの、花が極端に多く売れる物日(ものび)には、市場で相対かセリで、何箱か買います。
ミックスで売っているカーネーションや、スプレー菊も市場で買う。
同じものが、セリだと40円、相対だと60円、仲卸では80円だったりするからです。
同じ日に一物一価ではなく、当然のように一物多価になります。
あとは、セリ等で安く買って、束にして売る。
チューリップ50円で買えれば、50入りなら、5本500円で売る。
飛ぶように売れて、一箱すぐになくなります。
パンジーなどは、仲卸でもケース売りですから、セリ取引のほうが、一般的には安いです。
珍しいものは、仲卸で10本単位で買えば、ロスを防げますね。
全部仲卸で買えば、全部1本当たり、高い価格で仕入れることになる。
そうなると、店舗間競争力に、疑問符?がつくことになりかねません。
仕入れは、臨機応変に行って下さい。
それが、花屋開業の成功のもとです!
【阿部憲資略歴】
1996年 東京立川に花屋1号店オープン
以降、計30店舗の花屋開設
2001年 株式会社 花良品 代表取締役社長
2001年 日本フローラル協会理事
2007年 株式会社フラワー総研 代表取締役
現在に至る。
【著書(共著)】
「お花屋さんマニュアル」1~4誠文堂新光社
「花屋さんの仕事 基本のき」誠文堂新光社
【TV】
テレビ東京「日比谷花壇 vs 花良品」(30分特番)
テレビ朝日「花良品 vs 青山フラワーマーケット」(30分特番)
NHKBS 「花良品の鮮度保証販売」(5分特集)
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