2月後半から、新型コロナウイルスの蔓延で、
花屋の売上は大幅に落ち込み、駅ビルや専門店ビルの休業により、
4月7日の国の緊急事態宣言以降、営業そのものを出来なくなった花屋も多かったことと思われます。
5月6日までの国の急事態宣言は5月31日まで延長されました。
5月14日には47都道府県のうち39県は解除され、東京でも住宅地寄りの百貨店が営業再開されるなど、経済活動が三密を避けながらも再開されて来る見通しになって来ました。
この間の苦闘を振り返り、
また今後、私たち花屋はどのように経営すべきなのか、
今、考えておきたいと思います。
1、2月からの振り返り
1-1 2月
1月30日に、東京都で武漢帰りのツアーコンダクターの新型コロナウイルス感染が確認されました。
その頃から、武漢ウイルスの情報が増えて来ました。
2月に入り、大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の新型コロナウイルス集団感染がありました。
また東京の屋形船感染があり、新型コロナウイルスに対する警戒が強まって来ました。
そして2月26日の小池百合子東京都知事の新型コロナウイルスの緊急事態要望により、2月の客数減に拍車がかかりました。
東京の標準的な花屋の売上は、前年比80~90%程度のところが多かったと思います。
1-2 3月
3月は花屋は大変な多忙な月。
春爛漫の多種多様なお花の自宅用、桃の節句、ホワイトデー、卒業式、各種イベント、御彼岸、ご就任祝の胡蝶蘭など、花の購買のモチベーションに事欠かない月でした。
自宅用のお花については、外出自粛要請で客数30~50%減により、
ほぼ客数減に近い落ち込み。
来てくれた人はどうしても欲しい人なので、売上は30%減。
桃の節句やホワイトデーは目的性が強く微減。
卒業式はこじんまりとしたところが多く、謝恩会などは中止になっていましたので、東京では5割減、地方では微減。
イベントは自粛。
結婚式なども中止か延期で、9割以上減。
御彼岸は客数減で、15%減。
就任祝の胡蝶蘭は、目的性が強く前年並みでした。
また葬儀も葬儀場での感染が伝えられて以降、葬儀をしないで火葬場に直行する直葬などが増えて大幅減でした。
一方外出自粛のための買いだめなど、
スーパーの売上が伸び、
それに連れて、スーパーの花屋は置き花は堅調でした。
花業界全般は大変不振でしたが、
どういうタイプの花屋であるかによって、売上減少に大幅な違いがありました。
極端な話、
ブライダル専任ですと、売上ゼロに近く、
スーパーの花屋は前年オーバーな訳ですから。
就任祝の胡蝶蘭も、
民間企業では、ご就任・御栄転が多く、
ほぼ前年キープでした。
1-3 4月
4月は4月7日の緊急事態宣言により、
主要駅のビジネス街のテレワークの推進、繁華街の百貨店・駅ビルなどの休業で、人通りが70~80%減。
皆、家に篭り、郊外でも町は閑散。
花屋の売上も50%以上減から、良くて30%減。
一方スーパーの花屋は、ほぼ前年ピークと、
明暗を大きく分けました。
皆さん、家にこもっているので、
花に癒しを求め、今まで来店しなかった若い客層の女性やの来店が新鮮でした。
また、家に篭りっきりなので、庭で野菜作りを始める人が増えて、
野菜苗の売上は前年20%以上のところが多かったです。
1-4 5月
5月は年最大のイベント「母の日」の月です。
4月24日に、日本花き振興協議会が、
今年5月は「母の月」とキャンペーンを始めましたが、
現場は5月10日の母の日に向けて動いていました。
結果、母の日の売上は各花屋20%程度の大幅増。
東日本大震災の時もそうでしたが、
世の中に危機意識が広まると、
「家族の絆」「母への愛」が深まります。
また、母の日の前のゴールデンウイークや当日も遠出せず、旅行にも行かず家にいたので、通販や近くの花屋でしっかり母の日の贈り物をした人が多いようです。
母の日のネット販売は好調で、バカ売れ状態。
市場からカーネーションの鉢が消えるほどの状態。
母の日の最終競りでは、カーネーション鉢の価格は、昨年の2倍です。
やはりこういう高値相場の時は、店舗でも売れるものです。
この母の日を契機に、花屋にお客様が戻り始めているようです。
4月からの流れで、野菜苗は好調。
冬春苗から夏秋苗の植え替え時期にもあたり、
住宅地よりの花屋は、昨年までの流れに戻った感があります。
2、花屋経営の今後
2-1 複数の営業ラインを持つ花屋は強い
今回、自店以外にスーパーに販売拠点を持っていたところは、
自店の売上減はカバー出来ないにしても、
かなり助かったはずです。
胡蝶蘭の強い店も、3月末はかなり売れました。
普段強い葬儀花専門店もやや苦戦。
ブライダル花専門店も壊滅的打撃。
都心のイベント花専門店も、壊滅的打撃でした。
2-2 家庭の花の見直し
従来、葬儀やブライダルに特化したほうが堅いという業界の傾向がありましたが、
このような危機的な状況でも、家庭需要の花は底堅いことが見られました。
3月のお彼岸。
御彼岸の多い売上で、
4月の苦境をしのいだ形です。
通常の仏花・榊。
コロナウイルスと関係のない、通常の動きです。
またステイホームで、殺風景な部屋・心に耐え切れず花を求める人が増えたこと。
花は心の栄養と気づいた人が増え、
花屋は単なる花売りから、花による生活アドバイザーに昇格する契機にありと考えることが出来ます。
5月の母の日も、家庭のパーソナルなギフト需要。
この瞬間的な高売上による資金獲得で、
5月も凌げるわけですから。
3-3 有効なネット販売
お花の需要がある限り、
どこかで花が売れるのです。
花屋は雨で売れない、風で売れない、
暑いと売れない、寒いと売れない。
ネット販売は、雨、風、暑さ、寒さ関係ないです。
24時間、365日、全国営業。
簡単に売れるサイトは作れませんが、
研究してみる価値は多いにあります。
簡単に売れる花屋が作れないのと同様ですが。
【阿部憲資略歴】
1996年 東京立川に花屋1号店オープン
以降、計30店舗の花屋開設
2001年 株式会社 花良品 代表取締役社長
2001年 日本フローラル協会理事
2007年 株式会社フラワー総研 代表取締役
現在に至る。
【著書(共著)】
「お花屋さんマニュアル」1~4誠文堂新光社
「花屋さんの仕事 基本のき」誠文堂新光社
【TV】
テレビ東京「日比谷花壇 vs 花良品」(30分特番)
テレビ朝日「花良品 vs 青山フラワーマーケット」(30分特番)
NHKBS 「花良品の鮮度保証販売」(5分特集)
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