目次
1、一番売れる月、12月
1月~12月。
売れる月、売れない月があります。
その中で、ダントツ売れるのが12月、3月、5月です。
売れる月には、売れる理由があります。
12月はあとで詳述しますが、
3月はひな祭り、ホワイトデー、卒業、お彼岸、4月1日のご就任など。
花も、チューリップ、フリージャ、スートピー、ラナンキュラス、
アネモネなど季節の花も多く、個人でも、お花が買いたくなる季節です。
5月も、花業界の最大のイベント「母の日」があります。
また、4月同様、格好のガーデニングシーズン。
花苗、野菜苗などが大量に売れる時期です。
12月は、何といっても、年末の正月花販売。
27日から31日までの5日間が、年間で一番売れる一週間です。
あとは分かりやすいモチベーションは、クリスマスぐらい。
クリスマスは残念ながら、クリスマスケーキや他の物・事のプレゼントも多く、必ずしも花が主役ではないので、頑張らないとさほどうれません。
12月は、上旬、中旬の売り方で、ひどく差が付きます。
上旬、中旬は自分たちで、わかりやすいテーマを決め、
売り込む必要があります。
2、12月の花販売のポイント
2-1 12月上旬、中旬のシクラメン
花業界で、鉢物で何が一番売れるかご存知ですか。
圧倒的に一番売れるのがシクラメンです。
次にアジサイ、次に母の日のカーネーションでしょうか。
カーネーションは、今でも、母の日のベストアイテムですが、
母の日限定ですので、長い期間売れ、種類も多いアジサイに少し負けています。
あのアジサイより強いのが、冬場のシクラメン。
日本人、シクラメンが大好きです。
「一家に一台」シクラメンという言葉。
僕の造語ですが、まさにそのような感じです。
冬買っても、大体2月~上手くすると5月までお花が咲いています。
正月は家にいることが多く、年末・正月の風物詩です。
極端に言うと、おばさん、おばあさんは全員買う。
これは極端な言い方ですが、そのような感じなのです。
2-2 シクラメンの売り方
シクラメンも種類が多いです。
まず、ガーデンシクラメン。
これは、外で寄せ植えにして楽しむもの。
シクラメンの中でも寒さに強いものを選別して、
プランターなどに群植、寄せ植えするものです。
これは、一家に一台の対象ではなく、パンジーやビオラなどの苗ものと同じ扱いです。
まず、メインではありませんが、
4号サイズのミニシクラメン。
これは380円で売れれば、相当、量が売れるでしょう。
いいものであれば、600円、800円でも売れます。
主力の5号サイズのシクラメン。
11月から12月上旬にかけて、かなりのものを、1000円で売れば、かなり量が売れます。
東京でいえば、愛知ものではなく、関東産のものがいいです。
少し高いですが、持ちが全然違いますので。
メインの6号鉢。
これは、お歳暮商品の主力になります。
ラベル付きの良いものを、3800円~5000円で売れば、
お歳暮用として、相当量売れます。
もちろんお歳暮で買っていただけるような、店の信用力が必要です。
小さな店、品揃えの悪い店はお歳暮は無理ですね。
大事なお歳暮、任せる気がしませんものね。
お歳暮の適期が過ぎると、シクラメンの6号大鉢も、
市場で値が崩れて来ます。
商品も質が落ちてきます。
そのような中から、まあまあの6号シクラメンを600円ぐらいで仕入れて、1000円で売れば、飛びます。
まあまあのものを、競りで上手く買える、競りの技術が必要ですが。
仲卸に行っても、6号鉢は600円では買えませんので。
そこは、野菜や魚と同じなんです。
競りの、需給で価格が決まっていく過程で、
上手く出ものを拾える技術と、販売力が必要です。
そもそも、販売力の無いお店は、市場で直接買わない訳ですから。
例えば通常10万円売る店でも、12月上旬、中旬にはシクラメンだけで、1日2~3万円売ることが出来ます。
2-3 シクラメンの陳列の仕方
シクラメンを多く売るためには、
シクラメンを多く並べます。
当たり前のことですが、
これが出来てない花屋が多いです。
5個の中から選ぶより、100の中から選びたい。
お客様はそういうものです。
380円のシクラメン、600円のシクラメン、1000円のシクラメン、2800円、3800円、5000円のシクラメン、全て価格別にして、同じところに並べます。
一日20個売れるとすれば、60個並んでいれば、3日で1回転ということになります。
シクラメンの陳列は、大量ボリューム陳列に限ります。
2-4 ポインセチアの売り方
ポインセチアも12月の風物詩の一つです。
若い世代では、シクラメンよりポインセチアという傾向もあります。
ポインセチアは、メキシコ原産。
寒いのは苦手です。
ですから、室内向きです。
若い人たちは、マンション住まいが多いので、
12月の室内には、ポインセチアが最適です。
代表的なポインセチアの色は、赤とグリーン。
まさにクリスマスカラー。
ポインセチアがお部屋にあれば、もうクリスマスムードです。
ハロウィンでかばちゃを飾るように、
クリスマスはポインセチアを飾ります。
近年は、サントリーがポインセチアを改良した、
プリンセチアが大人気です。
ポインセチアの色を、ピンクの濃淡などパステルカラーにしたもの。
赤と緑の従来のポインセチアよりも、寒さに強いです。
売り場では、風に吹かれると痛むので、店内か風が避けられる軒下がベターです。
あまり大量に並べるというよりは、各価格帯1ケースずつにして、
寒さにやられないようなケアをして下さい。
2-5 シンビジウムの売り方
胡蝶蘭は年間商品ですが、
ランの中で、冬のスペシャリストなのがシンビジウムです。
冬だけなのに、1900年代後半では、年間のコチョウランよりも、冬場だけのシンビジウムのほうが、年間のコチョウランの総量よりも売れた時期がありました。
今でも冬になると、シンビジウムを求めるお客様が多いです。
かつては、立シンビ全盛ですが、
今世紀に入ってからは、アーチ型のシンビジウム全盛です。
アッパークラスでは、シクラメンより上位のお歳暮品として、人気があります。
胡蝶蘭は、寒さにあまり強くありませんが、
シンビジウムは5℃ぐらいまで大丈夫なので、
冬のお歳暮ギフト配送にも耐えられます。
いいお家の正月の玄関や応接間にピッタリ。
威風堂々としています。
立シンビですと3800~6000円、
アーチ型のシンビですと6000円~10000円が売れ筋です。
2-6 切り花の売り方
2-6-1 クリスマス関連商品の売り方
2-6-1-1 クリスマスは赤い花が売れる
クリスマスには赤い花が売れます。
ハロウィンはオレンジと黒。
クリスマスはなんといっても、赤ですね。
クリスマスの赤は、ジーザス クライストの血の色と言われています。
バラの花束でも、赤の花束や赤系のアレンジなど。
花の価格は需要と供給で決まるので、赤系の花は、他の色に比べて高いです。
でも意識して、赤の花の比率、高めておくといいですね。
2-6-1-2 クリスマスのリース材料
クリスマスは、室内や玄関にリースを飾る人が多いです。
リースは完成品をお店で買うよりも、
手作りで作りたい人が多いので、各地でリース作り教室が盛ん
です。
リースの輪は、雑貨屋さんなどでも、
100円ショップでも売っています。
花屋は、花屋らしいものをうりましょう。
リースのボディとしては、モミノキが最高です。
もちろん、他のツルの輪っかでOKです。
リースのボディに巻き付ける、孔雀ヒバ、ヒムロ杉。
アクセントのコットンフラワー、各種松ぼっくり、サンキライ、ユーカリ、バーゼリアの実など。
サンキライだけでも、簡単にリースが作れます。
これらは、クリスマス雑貨yasann屋さんにはありません。
花屋の独壇場なんですよ。
2-6-2 正月花の売り方
2-6-2-1 正月花が12月のメーンイベントです
一年で一番売れる5日間は12月27日から31日の5日間です。
どのくらい売れるのか?
普段の日に比べて、27日は3倍、28日は6倍、29日は6倍、
30日は7倍、31日は3倍。
この5日間で、通常の25日分売れるのです。
平均1日の5倍ずつ売れるのです。
これは超人技です。
ちゃんと25日分売るための準備を見てみましょう。
2-6-2-2 松市・千両市
通常、関東では松市が12月の第一か第二の日曜日に行われます。
正月使う松を、茨城県を中心にして、北は秋田県や南は愛媛県から、
市場に
勢ぞろい。
それをその日一日で、競るのです。
これが松市。
冬の風物詩。
よく昔は、大田市場などにTVカメラなどが入り、
松市が実況中継されたものです。
門松、若松、カラゲ松、五葉松、蛇の目松など全ての正月用の松が、そこで競られます。
その松は、クリスマスぐらいまで保管し、クリスマスイブが終わるぐらいから、一斉に正月用に捌き始めます。
千両市は、一般的には松市の翌週の日曜日に行われます。
主な産地は、茨城・千葉。
茨城で全国の60%ほどのシェアがあります。
今年は、台風で千葉・茨城に大きな被害があり、
数量減、商品の劣化が懸念されます。
千両・万両は、正月の縁起物として欠かせません。
それは、そのように千両・万両を縁起物として尊ぶ、
日本文化そのものです。
花業界も、日本の文化を支える、重要な役割を担っております。
このように、花屋は松市・千両市で松・千両を確保し、クリスマス直後からギアを切り替え、猛烈に年末商戦に流れ込むのです。
2-6-2-3 正月商戦で重要なこと
年末5日間で、25日分売る。
これ神業に近いです。
どうしたら、この不可能に見えることを、
可能にできるのか?
まず、置き場所の確保です。
わが日本フラワーでは、この期間中臨時で、
10坪のギャラリーと5坪の倉庫を臨時で借ります。
それでも、臨時スペースもパンパンですが、28日が過ぎれば、
少しずつ減って来て、31日には空になります。
もし15日分しか持てなければ、10日分売り逃してしまうわけですから。
置いてないものは売れません。
通常以外の置き場を、この時期、有料でも借りることをお勧めします。
次に、人の確保です。
25日分の花。
全部人の手を通ります。
短い時間のパートの人も、フルに働いてもらえるように依頼。
なるべく頭数を増やして、極端な残業にならないように心掛けます。
猫の手も借りたいほどの時期。
お店をやめた人や、普段応援してくれる人、家族、
また人材派遣なども活用してみて下さい。
2-6-3 1月の販売
12月31日で、ほぼ全ての花を売り切ってしまいます。
1月は、初競りの日まで、ゆっくりお休みください。
新しい年は、新しいお花で!
【阿部憲資略歴】
1996年 東京立川に花屋1号店オープン
以降、計30店舗の花屋開設
2001年 株式会社 花良品 代表取締役社長
2001年 日本フローラル協会理事
2007年 株式会社フラワー総研 代表取締役
現在に至る。
【著書(共著)】
「お花屋さんマニュアル」1~4誠文堂新光社
「花屋さんの仕事 基本のき」誠文堂新光社
【TV】
テレビ東京「日比谷花壇 vs 花良品」(30分特番)
テレビ朝日「花良品 vs 青山フラワーマーケット」(30分特番)
NHKBS 「花良品の鮮度保証販売」(5分特集)
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